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乙女ゲーム(携帯 PC DS PSP)のプレイ日記です。 文末に「瑛君とののの物語」というお話も掲載中。 気が向いた時、思ったことを綴っていこうかな~って思ってます。 だからきっと更新も話題もバラバラになると思います。 こんなブログですが温かく見守って下さい! *ネタばれ、セルフありです!
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文字オーバーということで、2ページ目に続きを載せました。
よろしければ、続きをお読みくださいね!
 
 
 
 
 
==================================
【瑛君とののの物語】
佐伯瑛誕生日企画:もうひとつのSTORY~20年目の奇跡~
 
 
ののは慌てて振り返った。
そこには、すらっと背の高い、こんがり日焼けした肌にアッシュ色の長めの髪。
切れ長の目に、すらっした鼻、整った薄めの唇の男性がたっていた。
 
「どうして黙ってるの?」
 
「えーと、あの・・・わたし。」
 
「・・・。」
 
その男性=佐伯はののをじっと見つめていた。
 
数秒の出来事だったのに、ののにはとてつもなく長い時間に感じられ
頭の中は、現実が把握できなくて混乱状態なのに、見つめられているという
恥ずかしさで、完全にパニック状態に陥っていた。
 
「ご、ごめんなさい!勝手に入ってしまって・・・」
 
どうでも良い言葉が口から発せられる。
 
「別に。ここ、誰が入ってもいいはずだし、俺の所有物じゃないから。」
 
「あ・・・そうなの?」
 
「お前、ここで何してるの?」
 
「えーと、今日、会社を休んだから、
ちょっと散歩にでも行こうかな・・・って思って。」
 
「ふーん、お前、散歩にわざわざこんなところに来たわけ?」
 
「うっ・・・変だよね。」
 
「多分。会社サボってまで来るようなところじゃないだろ?」
 
「サボってないよ・・・」
 
「ばーか、ばればれ。
普通の会社員だったらこんなとこわざわざ休暇取ってこねえだろ。
さぼった時に何となく来る決まってる。」
 
「そっか・・・」
 
ののは、最初話し掛けられた言葉が、懐かしいフレーズを辿ったので
「もしかしたら・・・」と思っていたが
今の現実的な会話のやりとりで「そんなわけはない」という思いに傾き、
どにかくここから逃げ出したい衝動に駆られていた。
 
(どーしよう、もうここから離れたい!この人誰なんだろ?)
 
「・・・。」
 
「あの、ごめんなさい!
私、用事を思い出したので、これで失礼します!」
 
とにかく、ここから離れたい一心で鞄を持って駆け出そうとした。
 
「おい!」
 
「はい?」
 
「これ、忘れ物じゃない?」
 
ののが振り返ると、買ってきたケーキの箱を差し出されていた。
 
「あっ・・・ごめんなさい。忘れ物です・・・」
 
そう言って、ケーキの箱に手を伸ばすと、佐伯は
突然、その手を掴み自分のほうへと引き寄せた。
 
「お前、人魚だろ?」
 
「えっ?」
 
ののの脳裏に、先ほど、自分の考えからかき消した懐かしいフレーズがまた、蘇ってきた。
(やっぱり、この人、もしかして???)
 
ののと佐伯は、暫くの間、お互いの顔を見つめていた。
 
もうひと引きされれば、口付けしそうな距離間に気付いたののは
慌てて、手を引き抜こうとした。
 
しかし、その手をまたグイッと引かれ、ののは、一歩も動けなくなった。
 
「まだ、思い出さない?」
 
「・・・。」
 
「柊ののさんでしょ?」
 
「何で、私の名前を知ってるの?」
 
佐伯は、掴んでいた手を、ゆっくりと緩めると、ニコリと笑って言った。
 
「だって、俺、お前のこと見つけるって約束しただろ?」
 
ののは、その言葉を聞いて、驚きよりも、何故だか、懐かしい、嬉しい気持ちになり
見開いた大きな瞳から、ポロポロと涙が溢れ出てきた。
 
「あなたは、あの時の?」
 
「そうだよ。」
 
すると、佐伯は、もう一度、ののの手を軽く引き寄せ、
ゆっくりと顔を近づけてきた。
 
ののは、魔法にかかったように身動きできずに、佐伯から目を離すことができなかった。
 
ののの唇に、暖かい柔らかな感触がしたかと思うと、それはすぐに離れてしまった。
 
「俺、お前にこうしてキスしたよね。」
 
「う、うん。そうだったね。」
 
「その後のことは、憶えてる?」
 
ののは、どんどん溢れてくる涙を抑えることができなかった。
次々溢れる涙を、佐伯が優しく暖かい大きな手で、ぬぐって
ただただ首を縦にふることしかできないののに優しく言葉をかける。
 
「なぁ、そんなに泣くなよ。俺はずっと憶えてたよ。
お前も約束してくれたんだよな。
20年後の今日、お祝いしてくれるって・・・」
 
そうして、あの時ののが渡した、ミッキーのキーホルダーをポケットから取り出すと
ののの目の前でゆらゆらと揺らせて見せた。
ミッキーがののにほほ笑んでいるように見えた。
 
「だから・・・わたし、今日、ここに来たの。」
 
「そっか・・・ホントに来てくれたんだ。」
 
佐伯はケーキの箱を指差して言った。
 
「これ、もしかして俺のかな?」
 
「うん、そうだよ、美味しいんだよ、そのケーキ。私の友人が作ったの。」
 
「そうか。嬉しいな・・・サンキュ。後でゆっくり食べようぜ・・・」
 
佐伯は、ケーキの箱を棚の上に上げると、空いたその手を
ののの背中に回し、掴んでいた手をもう一度引き寄せて優しく抱きしめた。
 
ののは、暖かな佐伯の温もりに包まれて、ふっと力が抜けていった。
それに気付いた佐伯は、今度はギュとののを強く抱きしめた。
 
「お前さ、こんな出会い信じる?」
 
「・・・うん。」
 
「俺が、ずっとお前を探して、お前を待ってたこと信じる?」
 
「・・・うん。だって、私もあなたのこと、ずっと忘れられずにいたんだもの・・・。」
 
「長かったぞ。20年・・・。」
 
「そうだね・・・。」
 
ののは、初めて、佐伯の腕のなかで微笑んでいた。
 
「あっ、お前、今、笑ったな?」
 
「だって・・・こんな奇跡みたいなこと起こるなんて、信じられないんだもん。」
 
「どれ?お前の笑顔、見せてくれる?」
 
佐伯は、両手でののの頬をそっと包み込み、ののの顔をじっと見た。
 
「よし、笑ってみろ。」
 
ののは、満面の笑顔を佐伯に向けると、また、涙が溢れ出てきた。
「いい、笑顔だな。泣き虫なのは、あの頃からか?」
 
「だって、止まんない・・・」
 
「わかった、じゃー止めてやるから・・・」
 
佐伯はののの頬に細い長い指を滑らせると、
顎に指を添えてののの顔を振り向かせた。
うなじに手を回し、しっかりとののの顔を固定させて唇を寄せてきた。
 
「んっ・・・」
 
佐伯の唇が軽く触れる。
 
一呼吸した後、佐伯は強く唇を押しつけると、
滑らかに味わうように何度も何度も繰り返し唇への愛撫を続けた。
 
ののが小さく吐息をもらすと、その隙間から佐伯の舌がするりと滑りこんできた。
そのままゆっくりと押し入ると深くののを味わっていく。
 
ののの体が震えた。
ののはどんどん遠ざかろうとする意識を何とか維持するのが精一杯だった。
体の力が抜け、立っていられなくなってくる。
 
そんなののを一度、ぐっと支えたあと、少しだけ、その力を緩めると
大きな両手でののの両頬を包んだ。
そしてもう一度、今度は優しく口づけした。
          
           ・
           ・
 
長い長い口付けの後、二人は、海の見えるバルコニーのほうに出た。
茜色に染まった空、太陽の光が海に差込み反射してキラキラ光っている。
大きな太陽が海から見える山の向こう側に沈もうとしていた。
 
「あっ、この景色・・・」
 
「ああ、あの時と一緒だ。」
 
沈んでいく太陽をみながら、ののは、ある言葉が頭に浮かんだ。
 
「ねぇ、ふたりは逢えたんだよね・・・」
 
「ん?」
 
「きっと逢えたよね・・・」
 
「ああ。そうだろうな。だって、俺とお前、こうやって逢えたじゃないか。」
 
佐伯はののの肩に手を掛けると、自分のほうへ引き寄せた。
 
「何だか、夢を見てるみたい・・・。
だって私、今朝、幼いあなたと私の夢を見たばかりだもん。
こんなふうに続きがあるなんて、信じられない。」
 
「ハハハ、チョップしてやろーかー?」
 
「遠慮しときます。
「・・・そうだ、ひとつ教えて欲しいことがあるの。」
 
「ん?何?」
 
「あなたの名前、聞いてなかった。昔も今も・・・」
 
「ああ、そうだったっけ?
俺は、佐伯瑛。名前については特に感想はなし。」
 
「何、それ?フフフ。」
 
「瑛って呼んでくれればいいよ。のの。」
 
「そうそう、瑛君は何で私の名前知ってたの?」
 
「俺、魔法使いだから・・・だからこんな奇跡も起こせるんだ。」
 
そう言って佐伯はののの額を人差し指でこついた。
 
「もう、ふざけちゃって!真面目に聞いてるんだけど。」
 
「わかったわかった、そんなむくれるな。
俺のじいちゃん、サテンのマスターやっててさ。
あーじいちゃん、憶えてるか?
ここで、お前に、可愛そうな若者と人魚の話を聞かせてくれてた人だ。
この町のことや町周辺のこと詳しくてさ。
おまえの親父とお袋のこと知ってて、それからお前の名前も聞いてもらったんだ。」
 
「そうだったの。」
 
「あの、おじいちゃん元気?」
 
「いや、3年前に天国へさっさといっちまったよ。
もう一度、珊瑚礁開ける約束したのに、間に合わなかった・・・」
 
「そっか。逢いたかったな・・・もう一度。」
 
目の前にあった大きな太陽はすっかりと海の向こうの山に沈んでしまって
辺りはだんだんと薄暗くなってきた。
 
「そうだ!私、瑛君に誕生日のプレゼント持ってきたんだ。」
 
「さっきのケーキか?」
 
「うん、それもそうなんだけど。他にもあるんだ。」
 
「よし、じゃー今から、ケーキを食べようか。
美味しいコーヒー煎れてやる。」
 
「うん!」
 
「行くぞ。」
 
佐伯は、ののの手を取って、歩き出した。
絵が飾ってある部屋で鞄とケーキの箱を持つと、
今度は佐伯の腕を取って歩き出した。
 
二人は灯台の入り口のドアを開けて外に出ると、
海岸通り沿いの道を、少し下って行った。
 
夕日がすっかり沈んでしまった空は、今度は無数の星達が
キラキラと輝きだしていた。
 
対照的に海は行き交う船が放っている光以外は、漆黒の世界が広がりかけていた。
時々、二人の間を、抜けていく潮風も少しだけヒンヤリとして
肌寒く感じるようになってきた。
 
しばらく、歩いて辿り着いたところは、
少し、古ぼけた、でも、とても暖かい感じのする建物だった。
 
玄関の扉の上に「喫茶・珊瑚礁」と書かれたプレートが掲げられていた。
ののが、そのプレートをまじまじと見ながら佐伯に聞いた。
 
「ここは?珊瑚礁っていうお店?」
 
「そう。俺が、高校3年生の冬までやってたんだけど
その後閉めちゃったんだ。
俺のじいちゃんが、やってたんだけど、もう、そのころ高齢でさ。
俺も手伝ってたんだけど、限界がきて、たたんでしまったんだ。」
 
「そうだったの。」
 
「でも、俺、絶対この店、もう一度開けるんだ。
じいちゃんとも約束したし。」
 
「うん!私も応援するよ!」
 
「ああ、その言葉、忘れるなよ!・・・で、こっち。」
 
佐伯は、ののの手を引いて、珊瑚礁とは別のもうひとつの扉の前に連れて行った。
 
「ここは?」
 
「ここは、俺の家。」
 
「へぇ~。」
 
佐伯は、扉に手をかけて開けると、中に入った。
 
「どうぞ。」
 
「わぁ・・・素敵な部屋だね。」
 
「まぁな。取り合えず、その辺に座ってて。
俺、今からコーヒー煎れるから。」
 
「うん、ありがとう。」
 
ののは、フローリングの床の上に座った。
ウッドハウス風の作りの、木の暖かさを感じる部屋。
 
ゆっとくりと、部屋を見渡すと、必要最低限のものしか置かれてなくて
シンプルな感じがまた、佐伯らしさを出しているんだろうなと思った。
 
「ははは・・・お前、なに、ジロジロ人の部屋見てんだよ!」
 
佐伯が、大き目のマグカップにコーヒーを入れてを両手に持って歩いてきた。
 
「あっ、ごめんなさい。
男の人の部屋ってあんまり入ったことないから珍しくてつい・・・」
 
すると、コーヒーの香ばしい香りが、どこからか漂ってきて部屋を包み込んだ。
 
「あ・・良い匂い・・・」
 
「だろ。これは珊瑚礁スペシャルって言って、俺がマメを調合して作った
オリジナルコーヒーなんだ、お前、わかるかな?」
 
「大丈夫!これでもコーヒーは通なんだよ。」
 
「そうか、じゃーほら、これ、飲んでみろよ。」
 
「うん。」
 
ののは手渡された、マグカップを受け取ると、まず、カップに鼻を近づけて
香りを楽しんだあと、そっとカップに口を付けてコーヒーを飲んだ。
 
「あっ、おいしい・・・」
 
「お前にも、わかるか?この美味しさ。」
 
「うん、まろやかなんだけど、アクセントが効いてる味だよね。」
 
「ハハハ、まぁ、合格だな。」
 
「あっ、そうそう、これ!」
 
ののは慌てて思い出したように、ケーキの箱を手に取った。
 
「ああ、そうだったな。ちょっと待ってて。ナイフ持ってくるから。」
 
佐伯は、奥のキッチンに行って、ナイフとお皿とフォークを持ってきた。
ののはケーキの上にろうそくをたてて、火を付けた。
 
「おっ、いいな~ちょっと電気消すぞ。」
 
「うん!それの方が、フインキ出るもんね。」
 
ぱちんと照明を落とす音が聞こえて、真っ暗になったかと思うと、
ろうそくの明かりと、海岸側にある大きな窓から月明かりが入ってきて
部屋がぼんやりと明るくなった。
 
「お誕生日、おめでとう!佐伯君!」
 
「瑛でいいよ。」
 
「えーと、瑛・・・君。」
 
「まぁ、いいか。」
 
「そうだ・・・瑛君って今日でいくつになるの?」
 
「25歳」
 
「へっ?」
 
「何だよーすっとんきょんな声出して。そんなに若いかあ?俺?」
 
「ち、違うよ、その逆。
あんまり堂々としてるからてっきり年上だと思ってた。
そうか・・・同級生だったんだ」
 
「ってことは・・・お前も25歳なのか?」
「そうそう、4月生まれ。」
 
「マジかよ、上なんだ。お前、小さい時チビだったろ?
だから、絶対下だと思ってたのに。」
 
「チビと歳は関係ないでしょ?」
 
「まあな・・・。」
「ねぇ、ケーキ食べようよ。これ本当に美味しいんだから。」
 
「お前の友達が作ったやつだったな?」
 
「そうそう、フランスに留学してたし、腕のいいパテシエなんだから。
さぁ、早く、このろうそく、吹き消して。」
 
「その前に・・・」
 
佐伯は、部屋のたなから、ランタンを持ってきてロウソクで点火した。
 
「せっかくだから、これで明かりを取ろう、いいフインキだからな。」
 
「素敵・・・。」
 
佐伯は、大きく息を吸うと、一気に息を吐き出してろうそくを消した。
ののは大きな拍手をしてお祝いの言葉を投げかけた。
 
「おめでとー!!」
 
「ああ、ありがとな。よし、じゃー食うか。」
 
「じゃー私が切り分けるね!」
 
ののは、ケーキを適度な大きさに切って、佐伯に渡した。
この美味しいケーキと美味しいコーヒーの味は、忘れられないものになりそうだった。
 
ケーキを食べながら、2人は、お互いの話を、とりとめもなく思いついたまま話ていた。
突然、ののは何かを思い出したかのように言いだした。
 
「あっ!そうだ、これ・・・」
 
鞄から、奇麗にラッピングされた箱を取り出した。
 
「あの、これ、気に入ってもらえるかどうかわからないんだけど・・・。
一応、誕生日のプレゼント。
出会った頃の、瑛君をイメージして選んでみたんだけど。」
 
ののは、その箱を佐伯に渡す。
 
「サンキュ!開けるぞ。」
 
「うん。」
 
佐伯は、その箱を受け取ると、ゆっくりと包み紙を開け出した。
箱を開けて、中のものを取り出した。
 
「いいな・・・これ!」
 
「ほんと?」
 
「ああ。」
 
「良かった・・・気に入ってくれて。」
 
すると今度は、突然佐伯が立ちあがった。
 
「ちょっと、待ってて。」
 
そう言って、佐伯は、棚に飾ってあるガラスの宝石箱から何かを取り出した。
それを手にもち、ののの前までやってきた。
そして、静かに話だした。
 
「俺さ、さっき言っただろ?
いつかきっともう一度珊瑚礁を開けるんだって。
高校卒業して、世間では一流大学と言われる大学に進学して
そして、お店開くなら必要だろうと思って、経済・経営の勉強をしたんだ。
ゼミでプロジェクトチーム組んで取り組んだテーマが認められて
大学院へのオファーがかかり、そのまま経営の勉強を続けてた。
卒業時にたくさんの一流と呼ばれる企業から誘われてたんだけどさ。
俺、どうしてもお店、再開したくて、バイトしながら店の補修とかしてたんだ。
そして、やっと、再開の目途が立ったんだ。」
 
しばらく沈黙が続いた。
そして、また、佐伯が話を続けた。
 
「店を再開する時には、最高のパートナーをみつけて
そいつにこのカギで珊瑚礁を開けてもらおうと思ってたんだ。」
 
「・・・。」
 
「お前、さっき・・・。この出会いを信じる。
俺が、お前をずっと待ってたこと信じるって言ってくれたよな・・・」
 
佐伯は、ののの顔をじっと見た。
ののは、佐伯の眼に捉えられて、身動きが出来なくなった。
 
すると、佐伯は、こんな幸せそうな笑顔があるのかと思えるような顔をして
すっとそのカギをののに差し出した。
 
「お前に、このカギやるよ。
これで、俺の夢の扉を開けてくれないか・・・。」
 
「・・・」
 
「どーした?ダメなのか?」
 
「・・・」
 
ののはあまりの突然の言葉を理解することが出来ず、そのまま佐伯を
じっとみたまま動けない。
 
やっと、佐伯の言葉を自分の中に落とすと、今度は、どんどん嬉しい気持ち、
幸せな気持ちが溢れでてきて、その思いが瞳から零れ出した。
 
「バカ、お前、また・・・。」
 
「だ、だって・・・嬉し・・・過ぎて・・・」
 
嗚咽しだしたののの首に手をまわした佐伯はののを優しく抱き寄せた。
そして、抱きかかえるようにしてののを海側にある大きな窓のところに連れていく。
 
窓越しに見える海は、闇夜の中で、
無数の星が煌めき吸い込まれていくような感覚に陥ってしまう。
 
寄せては返す波の音が、耳に心地よく、懐かしい子守唄のように包み込んでくれる。
穏やかで、安堵感に満ちた気持に満たされる。
暫く、無言で窓から見える海を眺めていた。
 
「ここは俺の一番のお気に入りの場所なんだ。
海が俺を包み込んでくれるんだ。特に夜の海が一番落ち着くよ。
深夜に一人でここに座り込んで、波の音を聴いていると
まるで自分が海の中に溶け込んでいくようなんだ。
どうだ?わかるか?」
 
ののは佐伯の腕の中でただただ首を縦に振ることしかできなかった。
 
「でもな、お前に見せたいのは、この夜の海じゃないんだ。
早朝の・・・そう、朝日が昇る瞬間。
海の色が七色、いやそれ以上に、変化して色んな顔を見せてくれる。
それを見ていると、自然に元気が湧いてくる。
珊瑚礁を開けるその日には、やっぱり見たいんだ、その景色を。
だから、明日は海に出るからな・・・。」
 
「・・・うん。」
 
佐伯はもう一度ののに向き合うと正面からきちんと抱きしめた。
ののも、遠慮がちに体を佐伯に預けていく。
 
優しく壊れ物を扱うように抱きしめながら、
ののの腰に手を回し少しずつ自分の体に引き寄せた。
 
佐伯は熱くなっている自分の体に、ののの体をぴったりと密着させた。
ののは驚いて一瞬体を硬くし、体をよじって少し離れようとした。
佐伯はそれを許さなかった。
 
今度はののの腰だけではなくお尻ごと包むように一層強く自分に引き付けた。
ののは戸惑いながら佐伯を上目づかいに仰ぎ見る。
少し頬を紅潮させている顔には喜びと不安が入り混じっているようだった。
 
「解るか、のの?俺が言いたいこと・・・。」
 
密着させた体を更に更に強く押しつける。
 
「・・・・」
 
ののは拒否もせずにただ俯いている。
抱きしめていた力を少しだけ緩め、ののの顔を上向かせ、そして口づけをした。
唇が先ほど食べたケーキのせいだろうか、やけに甘く感じる。
 
「お前の唇、甘いな・・・」
 
そう囁いてから、しっかりとその味をなめとるように口づけを続けた。
そして舌で唇を開け深く口づけをすると、ののは初めて佐伯にじがみついてきた。
その反応に佐伯の理性が失われてしまった。
 
一旦、緩めた腕の力を強め、ののを自分の体にピッタリと添わせる。
唇だけでなく全てが繋がるように。
 
(やっぱり甘いな・・・。)
 
そんな思いでののを味わっていた佐伯の唇の下で、ののがかすかに吐息をもらす。
少し唇を離すと、ののがかすかに囁いた。
 
「苦しいよ・・・」
 
そのかすれた秘めやかな囁きは、更に佐伯を溺れさせるのに充分だった。
もう一度深く激しく唇を奪うとののの体の力が抜けていく。
 
佐伯は唇を離しながら、ののの体を抱き上げた。
急に抱きあげられたののは小さな悲鳴を上げる。
 
「キャ!」
 
「覚悟はできたか?」
 
                 ・
                 ・
                 ・
 
 
突然ののは、佐伯に耳元で囁かれた。
 
「おいのの、起きろ。そろそろ出かけるぞ。」
 
ののは、まどろみかけていた自分の意識を眼覚めさせて佐伯をみた。
佐伯は、どこからか、自分のスエット服を持ってきた。
 
「夏でも早朝の海は冷えるんだ。これを着て。」
 
ののはそのスエットを受け取ると、自分を巻き付けている
シーツをはぐと急いで身支度を整えた。
 
「準備はいいか?」
 
「はい。」
 
「よし!じゃー行くか。」
 
佐伯はののの手を掴み、外にでた。
 
「もうすぐ、朝日が昇る・・・俺たちの第一歩がはじまる・・・。」
 
「そうだね・・・。」
 
朝日が登り出すと、佐伯が言ったとおり、太陽の光が
海面に反射して海が七色の光でキラキラ輝いていた。
 
しばらく2人で、その海をながめていた。
朝日が、海からか完全に顔を出したのを見届けると、佐伯が言った。
 
「さぁ、じゃー次いこう。」
 
「えっ?どこへ?」
「いいから、おいで。」
 
ののの手を引いて、今度は、「喫茶・珊瑚礁」の前までやってきた。
佐伯はののの首に掛っていたカギをそっと取りののの手に握らせた。
 
「ここの鍵は、お前が最初にあけてくれ。」
 
ののは静かにうなずくと、鍵を手に取り、鍵穴に差し込んだ。
 
「カチャリ・・・」
 
ふたりはどちらからともなく顔を見合わせた。
そして優しくほほ笑んだ佐伯の顔がののに近づき、軽く口づけを落とした。
 
「これからよろしく!俺のかわいい人魚姫。」
 
「こちらこそ、よろしくおねがいします。」
 
ふたりは、鍵をはずして、お店の中に入っていった。
これから、ふたりで、物語の続きを綴っていくために・・・。
 
 
 
 
 
 
                    終わり・・・
==================================
 
後書き:
すみません、完全に私の自己満足の世界なんです。
ただのエロ小説になってしまったようですが・・・www
R17指定ぐらいまではいってしまったかしらwww
ここまで読んでくださった皆様には、何てお詫びしようかと・・・。
 
本当はSSのつもりだったのだけど
どんどん話が広がってきて、一気に書けてしまいました。
やっぱり、瑛君への想いが強いのかな?wwwえへへwww
 
瑛君の誕生日に免じて、お許しいただければ・・・と思います。
(何か、許してもらう理由になってないような?)
 
これは、誕生日企画の番外編と言うことで、本編とは全く関係ありませんよー。
ってことで、本編は今までどおり「純愛路線」で行きますからねwww
 
でも、たまにはいいよねー
こんな企画もwww
 
あっ、そうそう、またイラストを大募集しま~す。
このお話にどなたかイラスト描いてもらえませんかー?www
 
 
本当に、最後まで、読んで頂きありがとうございました。
これからも、私は、佐伯瑛一筋で生きて行きま~す!
(ウソ!ちょっと浮気するかもーwww)

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無題
てるてるさん、とても素敵なお話でした!
もう、ドキドキして一気に読んでしまいました。
25歳の佐伯君はきっとかっこいいんだろうな・・・。
私も、こんな初恋があったらよかったのにな。

これからも、こっそり応援させて頂きますので頑張ってください!
幸せな気分になれえました。
ありがとうございました!
かのん| | 2010/07/23(Fri)19:34:27| 編集
Re:無題
かのんさん、遊びに来てくれてありがとうございます!

いやーホント、お恥ずかしいですねwww
深夜に一気に書いてしまったので
いつもよりは、大人な話になったかな~とはおもったのですか・・・
少々、やりすぎてしまったかと・・・

だって、コメントとか全くなくて、
「これ読んだ方々って、きっと呆れてるんだろうな・・・」って
ちょっと凹んでおしましたので。
お世辞でも、「素敵でした!」と言われると
ホント、励みになります!
一言でも、頂けると嬉しいです!!

これからも、稚拙な文章しか書けませんが
マイペースで更新していきたいと思います。
(本編の方ww)
そして、時々は、番外編も増やせたらいいな~って思ってます。

よろしかったら、また、是非、遊びにきて下さいね!!

励ましの言葉、本当にありがとうございました!!
【2010/07/24 12:58】
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自己紹介:
自己紹介ってこれといって何もないんですよね・・・。
会社員・主婦・母親の3足のワラジ履いてますが、どれも中途半端だし・・・。
密に乙女ゲーム大好きで結構、のめり込んでしまう方です!だから、余韻でしばらく次に行けない時がしばしば。でもやる時はやるけどやらない時は全くやらないかな・・・。昔のを突然やり出したりってこともしばしばです。
こんな私ですがよろしく!です。
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